第七話“嵐の前の・・・”


自分には可能性があった
何事も解決できるのだと思っていた
そう、あのときも
だがそれは幻でしかなかった
結局は自分一人では何も出来なかった
そう、何も出来なかったのだ
事態は最悪の方向へと進んだ
もう・・・逃げ出すしかなかった

その後一行はコスモステーションを転々とした
コスモステーションはこの星の人工物で、宇宙を漂う居住可能な施設だ
漂うと言っても、実際はある決まった軌道を通っている
無重力空間と重力空間を分けた施設もあり、それを利用したさまざまな実験が行われている
一行には月での一件もあり、不安はあった
しかし月にとどまっては袋小路になる可能性が高い
一行にはこの選択が最良だと思われた
実際、情報がリークしていたのかコスモステーションでは霞が幾度か連れ去られそうになった
だが、その度に神威がそれを防いだ
数十あるコスモステーションのほぼすべてを飛び回った頃、突如その日は訪れた
一行はあるコスモステーションに降り立った
それは軍所有のものだった

「ごくろうさん」
モニター越しに細身の男がやさしそうに声をかける
「全くここまで長期間預かることになるなんてな」
神威は皮肉っぽくつぶやいた
「まあ、そう言うな。その分の報酬だ」
神威が冷めた表情で二梃木を見ながら
「準備とやらは終わったのか?」
「ああ、概ねね。これでようやく次のステップに進めるよ」
「・・・神威」
ふと霞が間に入った
「私は・・・」
言いかけて神威が手で制した
「言わなくていい。言いたいことはわかってるから」
心痛な面持ちで、神威は視線をそらした
「・・・うん」
それきり、霞は言葉を発しなかった

「彼女の引渡し、無事終わったんですか?」
「ああ」
神威の返事に愛想はなかった
「そんなに好きなら別れたくないって言えばいいのに・・・」
「な、何言ってるんだよ!?」
「あら?私が気がつかないとでも思ったんですか?」
その言葉に神威は詰まった
リリスは続ける
「彼女もまんざらではないような気がしたんですけどね。もっと積極的に出た方が彼女も喜びますよ」
「か、彼女は・・・」
一瞬どもった神威は、咳払いをしてから言い放った
「彼女は仕事で一時預かってくれと頼まれただけだ。なのにそんな身勝手なこと出来るか!!!」
そんな神威にリリスは動じない
「ほんと奥手ですね。もっと素直になればいいのに・・・」

それからしばらくも経たないうちに例の事件が起こった
事件とはとてもじゃないが呼べないレベルではあるが
「マスター、大変です!」
「どうかしたのか?そんなに慌てて」
「軍が『セカンド・アース』に対し、宣戦を布告したそうです!」
「なんだって!?」

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