第六話“夢”


「ぐわぉ!」
「ダメです!奴らのシールドは我々のすべての兵器を無効化します」
「奴らに傷ひとつ付けることができないのか!?」
「皇帝一族は速やかに退避を!」
「かまわん!玉砕覚悟で突っ込め!」
「まさに化け物だ!」
「宙域の指数が急上昇」
「あのフォーメーションは!?」
「いかん!チェンジさせるな!」
「ああ!惑星ダヴィーンが・・・」

「うわああああ」
寝室内に神威の声が響いた
「はあはあはあ・・・」
「マスター眠れないんですか?」
リリスが顔を出す
しばらく沈黙が続いた
「またあの夢を見た」
「マスター!?」
リリスが狼狽した
「なんなんだ!?俺に一体何をさせようと言うんだ?」
「マスター・・・」
リリスの瞳が淡く曇った

霞は先程の出来事を思い出していた
自分をさらおうとした男たち
まさか月まで押しかけてくるとは
それほどまでに自分を必要としているのか
あの忌まわしい能力のために
しかし、それ以上に驚いたのは神威の光る手
恐らく自分を助けたときに扉をぶち破ったのはあの手だろう
けれど、それについて聞くことは出来なかった
神威は自分のことについて何も聞いて来なかったのだから
それでも知りたいと思った
神威のことだから

「神威!」
霞が神威を呼び止めた
「どうした?眠れないのか?」
船の中は狭いなりに整っており、それぞれ個室が与えられていた
ひとまずこの日は船の中で過ごすことになった
「神威こそ」
「まあね」
しばらく沈黙が続いた後
「神威、聞いてもらいたいことがあるの」
「ん?なんだい?」
「私の秘密。私は・・・」
「待った!」
霞が言いかけたところ、神威が制した
「別に無理して話さなくてもいいよ。別に聞きたいわけじゃないし。それに多分・・・まだその時期じゃない」
「・・・」
そう言われると、霞は何も言えなかった
霞は聞きたかった
だから自分のことを話そうと考えた
でもこれで聞けなくなってしまった
神威の秘密
神威は一体・・・

翌朝・・・宇宙空間で翌朝と言うのも変だが翌朝
神威はリリスと今後について話し合い、二梃木と連絡を取ることにした
「久しぶりだね、神威」
モニタ上には長身の色男が映し出された
「久しぶりだね、じゃねーよ。こっちは殺されかけたって言うのに」
「殺されかけた?君が?」
モニタの向こう側で男は吹き出した
「何がおかしい!」
「いやー、ごめんごめん。君が殺されかけたところを想像出来なかったもので。君を殺せる人間なんていないだろ?」
その言葉に神威は嫌悪感を抱いた
だが表情には出さなかった
その場にいた中でその微妙な変化を敏感に感じ取ったのは霞だけだった
「そのためにあれだけ報酬を弾んだんだ。ちゃんと彼女を守ってもらわなくてはこっちが困る」
「やっぱりそういうことか」
神威がため息混じりの言葉を吐いた
「一体いつまで彼女の面倒を見なければ行けないんだ?」
この言葉に一瞬霞がびくっとした
「もう少し待ってくれ。まだこちらの準備が整っていないんだ」
「準備?」
「そう、準備だ。もうすぐ終わる。だからもうしばらく彼女を預かっていてもらいたい」
「一体何の準備だ?」
「それは秘密さ」
そう言うと通信は途絶した

「神威、これは聖戦なのだよ。そして彼女はこの戦いにおいて重要な鍵なのだ」

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