第二十九話“光る星、崩壊する大地、舞い降りる竜 VSリトファイズン・陸戦仕様”


「この触手ひとつひとつが、すべて『光の手』だとでも言うのか!?」
また1体のディスパの胴体に光が突き刺さった
胴体を貫くまばゆい光
針は光を帯びていた
すでに15機の“ディスパ”が大地に横たわっていた
これが16機目だ
圧倒的だった
変貌した“ディスパレイド”の前に、ディスパの力は無力に等しかった
無数の光る針がディスパを次々と襲う
ディスパのパイロットたちは悪夢を見ていた
やむことのない悪夢を

「『終わりの星』の軍勢が降下してきます」
オペレーターが状況を説明する
だがまるで落ち着きがない
彼女は怯えていた
目の前で起きている光景に
「いまさら彼らが来たところでどうにもならん。むしろ呼び水だ。ついに、ついに始まるのだ」
「総司令官!いったい、いったいそのお体は!?」
部下が質問を繰り返す
二梃木の体からは淡い緑色の光の球が溢れる
小さな光の球は次々と湧き出る
物理的に奇妙と言わざるを得ない現象だ
「何を言っている?ならば君の体はどうだと言うのだ!?」
質問した部下からも、体から緑色の光が漏れ始める
「ああ、そんな。これはいったい!?」
光球は体からだけではない
計器からも、床からも、基地のありとあらゆるものから発生している
とめどなく、光が溢れてくる
絶望の光が

33の大気圏突入ポッドが『ファースト・アース』の大気圏内に侵入した
1つのポッドから3体の機体が飛び出す
大地に99機もの機体が立つ
機体は『セカンド・アース』のロボット“リトファイズン”に似ているが、形状が異なる
リトファイズンがひし形のフォルムならば、こちらは楕円形だ
そして4本の足が伸びている
2足歩行ではなく、4足で地を這うスタイルだ
対地上戦に特化した機体のようだ
ボボーン!
ズガギャン!
一斉に頂上に設置された砲門が火を吹く
砲撃は異形のロボットに向けられた
ドゴオ!
余りに唐突な攻撃
一斉掃射の前になすすべなく全弾が命中
その強力な火力の前に、崩れ落ちるディスパレイド
異形の姿は絶対的なダメージを受け、原形がわからなくなってしまった
その破壊力から察するに、火力はリトファイズンより上か?
『セカンド・アース』もこれだけのロボットを量産していた
このまま仮に『ファースト・アース』が『セカンド・アース』を攻め続けていたとして、果たして攻略できたのか
そう疑問を抱かせるには十分なほどの戦力を誇っていた
それが突然の『ファースト・アース』降下
おそらく目的は『ファースト・アース』軍と同じか?
この星系を脅かす“X”の存在の排除
それが今ではディスパレイド排除へと目的を変えている
誰もがこれで終わったと思った
すべて終わったと
だが、詰めが甘かった
「そうだ、すべてはあのときから始まっていたのだ。
 すべては定められたシナリオ通りに進んでいる。
 兄との死別、『能力者』と機械文明の出会い、女との出会い、恋、裏切り、別れ、死の恐怖、敵の存在・・・。
 さらなる進化を促すべく記憶に刺激を与える。
 それらをただ乗り越えてはダメなのだ。受け入れなければならない、すべての悲劇を。
 そうでなければ、遺伝子に刻み込まれない。
 そう、すべてシナリオ通りなのだ。
 だがこの先は未知だ。空白だ。
 なぜか?
 それが『ゲッター線』の意思だからだ」
ズズズ
朽ち果てていたはずの体が蘇える
破壊されたはずの機体が、再生を始める
自己再生能力
しかも再生した装甲は、より強固なものに生まれ変わっていた
体全体が、光に包まれる
ドゴー!
ドワ!
ドカ!
縦横無尽な光が、『セカンド・アース』のロボットを打ち砕く
「あなたはいったい誰なんですか?いったい・・・いったいこれから何が起きると言うのですか?」
「すばらしいことだよ」
ギギ!
ドドド!
ドワオ!!
その超高速な動きにまるでついていけない
ディスパも戦いに加わる
だが圧倒的だ
ディスパが纏いし光で応戦しようとするが、その行為すら許されない
光は2種類のロボットに次々と激突し、その存在を消滅させる
ディスパの光ごと、『セカンド・アース』のロボットごと
「さあ最後の如来光だ。すべてはこの刻のために仕組まれていたのだ」
戦いの最中、ディスパのパイロットたちは異変に気付く
目の前に計器が光を帯びていた
それが何を意味しているのか、わからなかった
いや、あるいはこのときすべてを理解したのかもしれない
己の身も光り始める
緑色の光がコックピット内に充満する
それは機体の外へと漏れ出す
「ああ・・・」
「そうか、そうだったのか」
「刻は満ちた。ついに、ついにこの刻が来たのだ!
 どれほどこの刻を待ちわびたことか!
 さあ来るぞ!来るのだ、『ゲッターロボ』の尖兵よ!」
緑の光が大地を覆う
いや違う、大地から溢れて来るのだ、とめどない光の奔流が
『セカンド・アース』のロボットには何も起こっていない
『ファースト・アース』の物からのみ、光が発せられていた
それらの光は無数の小さな球となって上空へと昇華する
緑の光球は吸い寄せられる、ある一点に
光を放つ範囲はとめどなく広がる
ついには星全体が光を帯びる
「さあ神威、選択の刻だ!貴様はどちらを選択する?
 再び同じ過ちを繰り返すのか?それとも未来へと進むのか?
 我々の未来はすべて貴様次第だ、神威!」
ディスパレイドの気質が変わる
光り輝いていた機体が、元の姿へと戻る
異形の姿ではない、元のディスパレイドの姿だ
そして黒い光が機体から滲み出す
溢れる闇が機体全体を包む
闇が広がる
それは大地を覆い尽くす
すべてを飲み込む闇
ディスパも、『セカンド・アース』のロボットも闇に抱かれる
淡い光も溶ける
さらに闇は広がりを見せる
ジブル基地すら飲み込む
「そうか、これが貴様の考えなのか!?これが貴様の答えか!くっくっくっく・・・、わーっはっはっはっはっはっ・・・」
やがて闇の拡大は止まる
ひとつの都市ほどにも広がった闇は収束する
そこに広がるはすべてを失った大地
クレーターのごとくぽっかりと開いた穴
草木も存在しない地表
数々のメカの残骸
そして嵐が吹き荒れる
だがそれでも止まらないものがある
闇に溶けた以外の光球が、どんどん上空へと吸い寄せられていく
厚い雲が緑に発光する
光のエネルギーがどんどん吸い取られる
さらに一点に収斂する光
星の光のすべてがここに集約した
光をすべて吸収した一点から放たれる紫電の雷光
大地に走る衝撃

・・・1匹の竜が出現した

そして、この物語の幕が開ける

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