第二十二話“激突 VSメカセミT444”


「はあああ!」
光る左手をぶつけようとするが、猛烈なスピードでかわす“新X”
成虫体は幼虫とは比べ物にならないほどすばやい
腰に差していたライフルを左手で構える
放たれる光の弾丸
だが、6本となった脚がそれを簡単にいなす
そのまま脚が伸びる
左右に展開しながらその攻撃をかわす“ディスパレイドType L”
これも幼虫時より速度が倍化している
右からの攻撃をかわすと、上から脚が飛んで来る
次々と脚が機体を貫こうとする
脚が少なくなったのが、せめてもの救いか
ディスパレイドはかわしながらもライフルを放つが、ボディに当たっても全く効果がない
「ただ単純に硬度が増したのか、それともこちらの攻撃を学習したのか」
成虫となってさらに存在感を増した新Xがディスパレイドに迫る

―――地上、ジブル基地
「総司令官!黒いディスパレイドが新Xに攻撃を仕掛けています」
「なんだと!?」
二梃木が驚きと悲鳴に似た声を上げた
「結界を『光の手』で突き破り、そのまま攻撃を続けている模様です」
「あれはまさか・・・Type L か?解体せずに残っていたのか。あれに乗っているのは神威なのか?」
二梃木の拳が震える
「ふっ。どちらにせよ、こちらとしては攻撃するか否か決めかねていたのだ。これは好都合かもしれないな」
不敵な笑みを浮かべながら、二梃木はその光景を注視していた

雨あられに脚が飛び交う
空を切り裂く
6本のうちの2本は体を支え、残りの4本が攻撃を仕掛けて来ているが、その脚は無数にさえ見える
超硬度の針が、畳み掛けるようにディスパレイドを襲う
脚は無限に伸び続ける
その形状からはありえない伸縮だ
ディスパレイドはそれでもこの怒涛の攻撃をなんとかかわし続けている
1本の脚が左手に持っていたライフルを貫いた
ライフルは脚に貫かれた状態で、大地に突き刺さった
ふいに新Xの背中が開く
そこから羽が展開され、上空に飛び立つ
「な!?まずい」
空中から容赦のない攻撃が始まる
飛行能力のないディスパレイドにとって、制空権を握られてしまったことの意味は大きい
加えて飛び道具がない
まさに格好の的だった
左前脚が、ピンポイントで右手を貫く!
その状態のまま飛行を続け、機体は地面に叩きつけられた
ディスパレイドは右手を押さえつけられて動けない
残りの脚が胴体部分に狙いを定める

「なめるなあぁぁぁああ」
バギャーン!
自らの左手で右腕を無造作にもぎ取る
そのまま左手が一閃
新Xの胴体に光の拳を叩き込む
だがわずかに傷が付いた程度
叩きつけた反動でディスパレイドはなんとか脚の攻撃を回避する
一旦離れて距離を取ろうとするが、脚は止まることなくディスパレイドに向かって伸びた
かわせない!
胸を貫く
その状態で機体は中空をさまよう
足が地面につかない
力が入らない
3本の脚が次々に突き刺さった
「ぐはっ!くぅ、こんな・・・」
吐血する神威
地面に叩きつけられるディスパレイド
左手で脚を砕こうと試みるが、全く動じない
刺さった脚をどうすることもできない
死相が見え隠れする
絶体絶命

その瞬間、瞳の奥に1人の少女の姿が見えた
「か・・・す・・・み・・・、かす・・・み・・・」
うつろな目をする神威
そう呟きながら左手に力を込めた
左手が漆黒に輝き出す
同時に白く輝いていたディスパレイドの左手に漆黒の光が混じる
白と黒のコントラストが入り混じった光が雷のように渦巻く
左手を振るう
刺さっていた4本の脚が、その場で粉々に砕けた
ボロボロの機体が立ち上がる

「なんだ、あの光は!?ディスパレイドにあんな機能はないぞ!」
声を荒げる二梃木
目の前で起こっている光景を理解できなかった
ボロボロのディスパレイドの左手に見える白と黒の雷光
「まさかあれがオーバーテクノロジーの真価!?機体とパイロットを極限まで同調させる技術だと言うのか!?」

「かすみぃぃいいいいいいいいい」
ディスパレイドの背面ブースターが点火する
光と闇が機体を包む
猛スピードで突き進む
新Xが砕かれた脚で応戦するが、構わず脚を粉砕する
光と闇の塊が新Xに激突!
新Xの胴体に風穴が開く
なおも攻撃は止まらない
残存部分も粉砕し続ける
まるでこの世に一片のかけらでも残しておくことを拒むかのように

すべてが終わったとき、その場に立ちつくすは右腕の欠けた、穴だらけのロボットだけだった

「やった、やったぞ!」
ジブル基地では歓喜が爆発する
労せずして新Xは消え去ったのだ
「“ディスパ”を50も準備する必要はなかったみたいだな。Xを買いかぶり過ぎたか」
皮肉を言いながらも、二梃木の顔にも笑みがこぼれた
勝利に酔う面々
だが、ただ1人、この輪の中に入れない者がいた
それは・・・索敵手
目の前のレーダーが、一面に光を放っていた
「そんなバカな。こんなことが・・・」
異変はすぐにモニタ上に現れた

荒野・・・霞の自爆によって作られた人工的な一帯に異変が起きる
地面が一斉に起き上がる
中から現れたのは幼虫体X
1体ではない
無数のXが地面から現れたのだ
それは霞の爆心地を中心に放射状に現れた
成虫から幼虫へ
活動を停止している最中、新Xは地中に無数の卵を放っていたのだ
まだ孵化したてなのか、大きさはディスパレイドとさほど変わらない
だがすでに戦闘モードに入っているかのように、眼がぎらついている
無数のXが、今にも崩れ落ちそうなディスパレイドを取り囲む

再び左手を光らせるディスパレイド
だがその手にはもはや黒い光はなかった
さらに光は機体を包むほどは広がらない
前面に申し訳程度に展開されただけ
そして、走ることもままならない
歩いて前進しているところに、1本の脚が突き刺さった
それを契機に次々と脚が機体を貫く
機体を覆うほどの脚が突き刺さり、ディスパレイドは空中に高々と掲げられた

一帯に、壊れたロボットのオブジェが完成した

inserted by FC2 system