第十四話“ディスパレイド” 「無理です!その体じゃ」 「無理だと言って撃墜されるのを待つのか!?」 神威はまだ癒えていないその体で動き出した 体のあちこちから悲鳴が聞こえる だが神威に道は残されていなかった 「それにどうやって敵を撃墜させずに逃げ切ると言うのです?」 神威は人を殺せない そこから出た疑問だろうか 「・・・それは」 反論できない神威 リリスが神妙な面持ちで続けた 「・・・すみません、私のせいでこんなことになってしまったのに」 神威はそれに対し、かける言葉が見つからなかった 黙ったまま、格納庫へ向かった 「“ディスパレイド”、発進する!」 宇宙船リリス=クレサードの前部ハッチが開く 船の大きさからしてその機体は格納庫に納まるギリギリのサイズだった そのため機体は横倒しで格納されており、出撃はそれ専用のレールで機体を移動させることで行われた そして宇宙空間へ放たれるディスパレイド ディスパレイドは人のフォルムに忠実な姿をしていた 胴体も四肢も人によく似ている “リトファイズン”とは対照的だ 機体の色も黒一色のリトファイズンに対し、ディスパレイドは全体的に白を基調にしている その中心部分はディスパレイドの方がやや大きいが、手足まで含めるとなると、ディスパレイドは半分くらいになる 傍から見ると、大人と子供くらいの差に見える ディスパレイドの操縦系統は通常のものとは大きく異なり、操縦者の動きをトレースして行われるものである そのため操縦者の身のこなしが大きく影響する 機体には武装といったものはこれと言って見当たらない 代わりにその手にはどでかいシールドが握られていた そのシールドは完全にディスパレイドの姿を覆いつくしていた ディスパレイドの登場で戸惑っていたのか攻撃が止んでいたが、またすぐ再開された ミサイル主体からビーム主体に切り替えてきたその攻撃は、次々にシールドに命中する 分厚いシールドがみるみる削られて行く 「リリス、動けるか?」 「なんとか。でもスピードが出ません」 すでに第2、第3補助エンジンも停止し、残るは第1だけである スピードは1/10も出せない とても逃げ切れるものではない 「このままではダメか」 シールドの受ける衝撃が機体を通して神威にも伝わってくる 頭を振る神威 意識が朦朧とする 絶望的な状況にもかかわらず、まるで頭が働かない よほど血を流し過ぎたのか、頭を完璧に動かすほど血が十分ではないのだ それでも攻撃が止むことはない 衝撃がどんどん大きくなる それに反比例するように、神威の意識が遠のいて行く ・・・刹那、完全に意識が飛んだ 「・・・か・・すみ・・・・・・霞!!!」 飛んだ意識の先に見えたのは1人の少女の姿 神威は再び頭を振って前を向く 「・・・やるしか・・・ないのか」 その目には覚悟の光がこもっている 崩壊するシールド あらわになる機体 機体に直撃するビーム だが、ビームは機体に傷をつけられない なぜかはじかれていた そのとき、ディスパレイドの右手が光り輝いていた