第十一話“真実”


もう人を信じることなど出来なかった
信じる気など起きなかった
俺がしてきたことはなんだったのか
全てが徒労だった
もう生きている意味すらわからなかった

「霞に一体何をしているんだ?」
神威の怒声が飛ぶ
少女は奇妙な機械につながれていた
頭部をメカが覆い、それが周辺のコンピューターへと伸びていた
その光景は異様としか言えなかった
「彼女の能力は意識の支配だ」
二梃木が口を開く
「彼女は他人の脳波と自分の脳波をつなぐことが出来る。そしてその相手の意識を自在にコントロールできるのだ」
「なっ!?」
あまりの事実に神威は言葉を飲み込んだ
「彼女の能力は意識の支配。
 彼女と直結したコンピューターはその波動を軍の各戦闘機へと送り、パイロットの意識を支配する。
 支配に従ったパイロットは怯えも恐怖もない。純然たる戦闘マシーンへと変貌するわけだ」
神威はその事実を受け入れられない
彼女を想うがあまり、自分の考えを見出せないでいる
あの屋敷で行われていたこと
それは人を操れる人間を作り出すということだったのか
「ならなぜ俺は操られなかった?」
神威が問う
「それは貴様が根本的に我々とは違うからだ」
「!?」
「それがどういう意味か、貴様にはわかるだろう?だから貴様は彼女の連れ出しに適任だったのさ」
沈黙する神威
それが何を意味しているのか、神威にはわかっているようだった
「これからも彼女の支援により戦争は有利に進められる。
 まさに君がしたことは我が軍にとって非常に有益なものだった。
 礼を言わなければならないな」
そう言って手を差し出す二梃木
だが神威はその手に反応を示さない
しばらくしてふいに神威の口元が動く
傍目から見れば、それは悪魔の微笑に見えたかもしれない

「ふぅ」
二梃木は安堵したのか、一際大きなため息をついた
ついで部下とおぼしき人物に話しかけた
「被害状況は?」
「基地は壊滅状態ですが、死者はゼロです」
その言葉に二梃木は意外そうな、納得したような、複雑な表情を浮かべた
「噂通りか。神威は人を殺せない」
「総司令官、それよりもお怪我は大丈夫ですか?」
部下が心配そうに尋ねる
「心配ない。すぐに手当てを受けた。それに言っただろう。あいつは人を殺せないんだ」
「はあ」
「だが彼女を失ったのは痛いな」
二梃木は再び大きなため息をついた
そのとき別の部下が慌てた様子で駆け寄ってきた
「総司令官、報告が。・・・第707部隊が全滅しました」
その言葉に顔を暗くする二梃木
「・・・コードネーム“リトファイズン”か」
「おそらくは」
「まったく、困った物を作ってくれたものだ。奴らは平和主義者じゃなかったのか?」
うんざりしたように言い放つ
それに対し、部下が助言する
「は!しかしながら、元来平和主義者を公言する者は、あまりにその平和の状況を維持しようとするがゆえに、
 また脅かされるのを恐れる余り、身を守るために武器を手にする輩が多いかと存じ上げます」
その言葉に二梃木はニヤリとした
「・・・それは君の考えかい?」
部下は一瞬ヒヤッとし、自分の過ぎた行動を悔いた
「・・・は、はい!出過ぎた発言を失礼致しました」
二梃木は鼻で笑いながら言う
「いや、確かに君の言う通りかもしれない。平和主義者も所詮ご都合主義者か」
しばらく笑った後、顔色に真剣さが戻った
「それにしても、そいつに対抗できるのは“あれ”くらいか」
「“あれ”はとても常人には扱えません」
「あいつが使っているのは試作機だ。“あれ”の量産機はうちの軍人でも扱えるはずだ」
「・・・しかし」
「言いたいことはわかる。だが戦闘機だけですらリトファイズンをほぼ沈められた。
 “あれ”があれば我が軍は無敵だ。・・・やはり彼女は必要だな」
「・・・総司令官」
「種は播いた。後はどう育つかだ」
二梃木は一層薄気味悪い笑顔を浮かべた
その表情に部下は背筋を流れる冷たいものを感じた
「総司令官っ!」
突如別の部下が声を上げた
「なんだ、どうした?」
「これを見て下さい!」
二梃木は部下に渡された資料を見て驚愕した
「なんだこれは!?」

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